胸ときめくようなあのAppleは、もういない。

2016年3月22日

Appleファンの方は読まないでください。

日本時間の今朝おこなわれたAppleのイベントでは、小さい iPad Pro小さい iPhone が発表された。終わり。みたいな感じだ。書いていて何か身につまされるものがある。噂通りというか、それしかないのかというか。
純粋なApple教徒の皆さんやメディアは提灯記事を書くのだろうけれど、Appleがここ数年に発売した新製品にほとんどワクワクしなくなっている僕としては、批判的な記事になることをお許し願いたい。

このあまり景気が良いとはいえない経済状況の中でも、Apple製品はそこそこ売れているし企業規模は拡大しているのだろうが、このようなこじんまりとした、イノベーションとも呼べないような新製品ばかりを出していて、Apple というブランド価値は生き続けられるのだろうか。

今回の発表では、愛するAppleユーザーの要望に応えるということを第一優先にしたといえる。数年前に iPhone のサイズを大きくしてしまったら(iPhone 6)、「大き過ぎる」「小さいままで良かった」というユーザーの声が多かったのだろう。また、iPad Pro も似たようなものだと思う。「持ち運びができない」「もうちょっと小さきゃ買うんだけど」などなど。

ユーザー第一というのは物わかりが良い優等生的なイメージがあるが、過去のAppleはそんな企業ではなかったはずだ。ユーザーを裏切るとまではいえないが、良くも悪くも「俺たちがやりたいようにやる、どう?」という問いかけの製品を出してきていたように思う。それが彼らの自信であり、未来へのチャレンジだったのではないか。しかし現在のAppleは、とにかく売れればいい、と思っているように見える。実際そうなのだろう。

その証拠は、今回発表された小さい iPhone SE のデザイン。まるまる iPhone 5 だ。新製品ですぜ、二世代前に戻ってどうするのか。プライドが無くなっているようにも思える。まだ iPhone 5C の方がマシだったろう(まるで売れなかったけど、もっと安くすればよかったんだよ)。これでは、もう何年も前に Mac から CD や DVD のドライブを削除したのに、評判が悪かったから復活させました、みたいなものだ。過去は振り返らない、レガシーは切り捨てていくのがAppleの潔さだったはずなのに。

iPad Pro についても言っておかなければならない。ただ小さくしただけだけど、先に出ていた12インチのものよりは売れると思う。さらに言えば、最初からこれだけでよかったのではないだろうか。しかしこれ、どう見ても Surface だし、ビジネスツールとして使用するのであれば、Microsoft の方がよくできていることはみんなが認めている。

Appleユーザーが圧倒的に多いデザイナーたちが(僕もその端くれではあるが)あの大きなタブレットを使う用途としては、イラストや画像をクリエイトすることがメインになると思うが、専用の Pencil やアプリケーションに慣れないとかえって面倒に感じてしまうだろう。Wacomタブレットの方が格段に使いやすい。印刷前提のシビアな画像データを制作するなど iPad では考えられない。Web用画像だったらいけるだろうが、iPad mini や iPhone でだってやってる人はいるからね。仕事で使わないのなら、今までの iPad Air でよい。リプレイスする必要などどこにもない、実に中途半端な製品なのだ。

そもそも Steve Jobs は、iPad にペンシルなど必要ない、指がその代わりになると言っていたではないか。キーボード?なぜそんなものが必要なの?とも(実際はこんな言い方はしていなかったかもしれないが、ニュアンスは)。完全に逆行しているし、ましてやいつのまにか Microsoft の後追いである。

iPhone SE は16GBで52,800円の SIMフリー機としても発売されるから、そこそこ売れるのかもしれない。しかし、Androidも含めたスマートフォンを使っている人たちが大きい画面に慣れてしまっているのに、多少持ちやすいからといって今さら小さな画面に戻るだろうか。もっと古い(例えばiPhone4sなど)iPhone を使っている人の買い替え需要くらいなのじゃないかな。少なくとも、まったく新しい独創的なスタイルで出てきたら、と思うのは僕だけではないはずだ。

IT的なイノベーションはここ数年のAppleには見当たらない。Googleにはまだそれを感じる。今、新しいサービスを発表し続け、最も驚かせてくれているのはAmazonだろう。これは利益がどうこうという問題とはまた違う、現在から未来への期待度としてみた話である。

Jobs を失ったことはあまりにも大きい。彼が最後に発表した革新的な製品は MacBook Air だったと思う。Macの中ではいまだに売れ続けている。かたや昨年発売された MacBook(12インチ)はどうだろう。仕事としては使えないし、キーボードを付けた同じ12インチの iPad Pro とどう使い分けるの?という疑問符がつくような製品。Apple Watch はAppleのものとは思えないほど無骨だ。レトロなのか再先端なのかよく分からないデザイン。時計はまず第一にファッションなのだ。それに機能としてのイノベーションが付随してほしい。

実はAppleは失敗作をよく出す。こんな生ぬるい製品をこれからも出し続けることがないことを期待する。古くからのMacユーザーの一人としては、スカリーやアメリオ時代の悪夢が再現されないことを祈るばかりだ。

コメントを残す