雪の日と手塚治虫

2014年2月9日

大雪の翌日

60年ぶりの大雪となった日から一夜明け、再び太陽が戻ってきた。雪国生まれなので多少は雪に慣れているつもりだが、さすがに関東平野でこんなに積もるとは思わなかった。受験生や都知事選もエライ日にぶち当たってしまったな。最終的な投票率はどうなるんだろうか(都民じゃないので他人事)。そんな本日は、手塚治虫の命日です。

 

今でも誰もが認める漫画の神様が天国に旅立って、もう25年も経つらしい。ぼくが影響を受けた漫画として、『火の鳥』を挙げないわけにはいかないが、これはただの漫画というよりも哲学書だと思っている。『ブッダ』も同類の作品だが、人類規模という面で『火の鳥』の比ではない。アニメ作品としては『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『リボンの騎士』『ブラックジャック』などがあまりにも有名で、その他作ぶりもよく知られている。

手塚治虫の作品一覧をWikipediaでみてみよう。なんと604作品もある。アニメだけでも70作品にのぼるというのだから化け物だ。600作品を数えるとそれほど知られていない作品も多いが、読んだり観たりしていた年代によって思い入れのある作品は異なる。

そのひとつに、この雪の日とともに思い出した作品『フライングベン』 がある。佳作といえる存在かもしれないが、50代前後の方にとっては「少年ブック」に連載されていた犬が主人公のマンガといえば、懐かしく思い出す人もいるだろう。

この漫画をなぜ雪の日に思い出したかなのだが、冒頭の章が雪山が舞台の謎めいたストーリーで、とても印象に残っていたからだ。3匹の犬が活躍する冒険活劇風の作品だが、人間と犬との切ない関係が描かれていてなんともいえない気持ちになったものだ。手塚治虫の動物や生き物をテーマにした作品にハズレはない。犬が好きな方にはぜひ読んでほしい。

そして、雪のシーンといえば忘れられないのがもうひとつ、鉄腕アトムの『イワンの馬鹿』の巻がある。

宇宙ロケットが遭難し、アトムと5人の乗客が救命艇で脱出、月へ不時着した。 最初は、そこはまったくの死の世界かと思われたが、太陽がのぼると、凍っていた空気が溶けて人間も生きられることがわかった。 そしてそこには、はるか昔に遭難したソ連のロケットが朽ち果てていて、イワンという旧式のロボットがいた。 イワンは、主人だったミーニャ中尉が死んだあと、ひとりでロケットを守っていたのだった。
(手塚治虫公式サイト「マンガWiki」より抜粋)

手元に漫画がないので記憶があやふやだが、遭難したアトムと乗客たちが月から脱出しようとするラスト近くのシーンで、しんしんと雪が降ってくる。月の空気が凍り始める時期だったのだと思う。イワンのあまりの実直さ加減に、ロボットの悲哀さが描かれていて、子供心にとても悲しい思いをした気がする。どこか、ウルトラマンの怪獣ジャミラとダブったりもするのだ。

手塚漫画は、人と人という人間関係を描くのみにあらず、人と生き物、生き物同士、人とロボット、ロボット同士というまさに森羅万象を網羅して、「生きる」ことの難しさや素晴らしさを表現した。過去から未来という時間軸をも超越していた。こういう漫画って、ぼくにとっては充分に教科書になっていたんじゃないか。クールジャパンという名称はともかく、今も日本の教育として漫画は侮れない教材なのだ。

そんなことを考えた、雪の日の翌日である。

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