角川書店のセールが話題だが、電子書籍にはどうしても許せないことがある

2014年1月23日

電子書籍にまーーったく興味が無いかたにとってはどうでも良いお話。角川書店がKindleストアと楽天koboで70%オフセールをやっている。セール期間は1月28日9時59分までということだ。昔だったら「今すぐ本屋へ急げ!」だが、電子書籍は在庫がなくなるわけではないのでギリギリになってもかまわないから気が楽だ。安くなるのはうれしいが、以前から電子書籍について許せないことが一点ある。

「あー、それは価格のことだね」と思われるかもしれないが、まあ、それもあります。確かに、価格についてはいろいろと問題があるので、そのことにも触れておこう。

なぜ、電子書籍の価格を適正にできないのか

電子書籍は、出版に関わる諸々の利益配分の部門、つまり印刷から配本〜流通にいたるまでのアナログでなければほぼ存在しない部署や経費やマージンがごっそりと不要になるので、販売価格が紙の本よりもかなり安くてしかるべきだ。なにしろ中身は物理的に存在しないデジタルデータだけなのだから、コンテンツそのものの価値しかない。コンテンツには作家と編集者の創作費用が含まれ、あとはプロモーション費用や配信費だけである。

現在、出版社は一般的な電子書籍の価格を、意図的に紙の本とあまり変わらない値付けにしていることが多い。例えばKindleストアでは、『半沢直樹』の原作本『オレたちバブル入行組』が文庫本で690円、電子書籍で689円(1月23日現在)。なんと1円しか違わない。モノとしての存在価値や特に古本で売れるという価値を考えれば、紙の書籍を買う人のほうが多いのではないだろうか。

出版社が適正な電子書籍の価格設定に踏み切るには覚悟が必要だ。紙の本の出版システムを一旦解体しなければならないからだ。それに関わる相当数の人数の生活を犠牲にすることになる。しかも、日本の場合は業界慣習が強いので、どこか一社が抜け駆けしにくいのが現状である。どこまでも護送船団方式なのだ。踏み切るにしてもみんな一斉に、でやるしかないだろう。黒船のKindleや業界外の楽天やソニーがいくら仕掛けてきても、肝心のコンテンツを握っている出版社が動かなければどうしようもない話なのだ。

実はこれ、本の話ばかりでもない。新聞社も同様に、電子版の価格をほとんど下げようとしないのはご存知のとおりだ。これも既存の新聞“紙”という、特に宅配システムを守る必要があるためである。読者は良質で信頼できるコンテンツさえあればいい。必要な人は、それに適正なお金を払うことにいささかの抵抗もないのだが、デジタルというしくみで配信できるようになった今、無意味なアナログ的なものに身銭を切りたくないだけなのだ。押し紙などというバカバカしいものにも呆れてしまう。

電子書籍の分冊は、読者を無視した形式だ

価格の件で長くなってしまい、どうしても許せないことがこんなに後になってしまった。それは分冊である。ページ数の多い単行本を文庫にして販売するときに、上巻・中巻・下巻などにわけて販売するアレだ。紙ならば分厚くて重い文庫本などを持ち歩きたくないのだからそうするのも理解できる。しかし、データをなぜ分けなければならないのか。電子書籍ともあろうものが、紙の出版のように分冊で販売している文庫本のいかに多いことよ。これは価格のところで書いたような理屈で、紙の本の価格とあまり差がないようにするためだと思うが、意味が無いでしょう。

上中下と3巻あるのなら、データを一冊にまとめて3巻分の価格で販売すればいい。分冊することで、1巻分の価格が安く見えるから買ってもらいやすいと思っているのなら、それは電子書籍の読者をバカにし過ぎである。上巻を買って、もう読むのを辞めたなどとという人は少ないはずだ。最初から「その本全部」を買おうと思っているのだから。

「便利さ」と「軽さ」がメリットでもある電子書籍として、面倒この上ないし、何度もいうようだがまったく意味が無い。今回の角川文庫のセールでも、この販売形式になっているものが相当数ある。ダン・ブラウンものなんかは早く1冊にしてほしい。電子書籍の魅力を殺してしまっているこのような商法を続けていると、そのうちしっぺ返しがくるかもしれないよ。

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