悲しいのは、ガラパゴスだけじゃない

2011年10月31日

ちょっと遅過ぎる話題ですが、9月15日に「出版デジタル機構」という会社ができることが発表されました。でも、まだ仮称だそうで、しかも参加出版社が会社の設立に合意した、という段階らしいです。参加は、インプレスホールディングス、勁草書房、講談社、光文社、集英社、小学館、新潮社、筑摩書房、東京大学出版会、東京電機大学出版局、版元ドットコム(代表:ポット出版・ほか6社)、文藝春秋、平凡社、有斐閣の20社。

 

日本ではまだこんなことをやってるわけです。いわゆる護送船団方式ですね。みんなで渡れば怖くないと。ハードメーカー各社からタブレットが出ましたけど、電子書籍周辺のインフラが整ってもいないのに、遅れてはいかんとハードばかりを先行させてしまいました。

iPadがiBooksというアプリをメインに登場してきたように見えたことで、一種の錯覚に陥っていたのではないでしょうか? もちろんApple自身もiTunes Storeの書籍版を展開することで、電子書籍のプラットフォーム主導権を握りたかったには違いありません。

しかし、iPadは電子書籍専用端末ではありません。iBooks Store なんて日本では展開されていないにも関わらず、タブレット売上のシェアはダントツです。そう、iPadを電子書籍用端末として使用している人など、日本ではまだまだ少数なのです。ところが日本製のタブレットは、ほとんどが電子書籍用をメインとして出してきてしまいました。マーケティングの失敗云々というよりも、あまりにも木が熟していなかったことは明白です。なんでしょうね、地に足が付いていないというか、うろたえていたというか。

なぜ日本では電子書籍が普及しないのか

日本で電子書籍が普及しない理由はいろいろ言われていますが、次の点が大きいのではないでしょうか?

  • 著者と出版社の版権の問題と取次との関係。
  • そもそも本をディスプレイで読むという世代が増えていない。

最初の理由はビジネス的な要因ですね。旧態の出版流通システムが変わっていくことに対しての抵抗といえそうです。著作権というクリエイティブなものに対しての価値の変動(価格のコントロール権)を、そしてモノを物理的に作り(印刷会社)動かす(取次・物流会社)業務の大幅な削減を、許容できるかどうかということです。そうすることで書籍の価格も大幅に下がるはずですが、生活がかかっていますからね。拒絶する業界人、多そうです。

ふたつめの理由は時間が解決するしかない気がしています。ディスプレイで文字を読んでいないかというと、そんなことはありません。これだけのネット社会なのですから。問題は、本が既存の「紙の束」を念頭に作られてしまっていることです。紙の本としてまとめられた文章スタイルと、ディスプレイを前提に書かれたものとでは、視覚やUIの差によって読むリズムが大きく変わってきます。短いセンテンスと一読したときのわかりやすさがないと、ディスプレイでは辛いです。

携帯小説がなぜ読まれているのかといえば、最初からあの小さなディスプレイをスクロールしながら読むことを前提に作品内容も文体も作られているからです。コミックは携帯に最適化した見せ方を工夫したために成功しています。作品を送り出す側の意識変革と、読者の慣れが必要でしょう。手っ取り早いのは、学校の教科書をとっとと電子書籍にしてしまい、小学生の頃からそれに慣れさせることかもしれません。

以上のような問題点をクリアしていかない限り、躍起になってハードを出しても成功はしないでしょう。現在、電子書籍事業でトップを独走中なのはAmazonです。Kindle storeという電子書籍販売サービスとKindleというハード、他社のモバイルやタブレットでも利用できるKindleアプリを用意して、電子書籍分野では圧倒的なシェアをとっています。

iPadに対抗すると言われるKindle Fireというカラーディスプレイタイプが発表されましたが、iBooks store同様Kindle store自体が日本で起ち上がらない現状では、われわれユーザーは指をくわえてみている他ありません。Amazonが日本語版を立ち上げるという報道がされただけでうろたえているように見えます。そんなこと、何年も前から予想されてたじゃないですか。

AppleとAmazonのようなプラットフォーム主導のハードでない限り、日本のメーカーが何を出してもシャープのガラパゴスの二の舞になるだけだと思いますけどね。どうでしょう?

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