デザイナーに必要なITリテラシーとは何だろう

2011年9月23日

これは既に現役で活躍しているデザイナーにとってはわかりきったことであることをお断りしておきます。つまり、これからデザイナーになりたい、なろうとしている人たちに考えて欲しいと思っていることです。

 

デザイナーがキャリアの最初からアートディレクターになる、などということはあり得ません。意外に古い世界で、ある意味修行期間が必要になります。基礎、いわゆる職人の世界を経験しなければなりません。これはどんな高名なクリエイターでも必ず通る道です。

それは文字、色、造形バランス、印刷知識を習得することでした(もっと山ほどあるのですが専門的過ぎるので省略)。もちろん今でもそれは必要なことです。そこからスタートして、次第に場数を踏みながらビジュアルの引き出しを広げたり、コンセプトワークとかプレゼン技術を磨いたりしながらディレクターに進化していくということになります。

そこにデジタルという概念が登場してかなりの年月が経過しました。その過程で、デザインの現場から脱落していった諸先輩や同僚を何人も見てきました。職人気質のデザイナー(つまりディレクターではなく、ひとりでほとんどをこなしていた人たち)は、デジタル化になってかなりの数が消えていったはずです。設備投資という金銭的な問題もありましたが、なによりも超速スピードで進化するデジタルスキルに追いついていく余裕がなさ過ぎたことが原因のひとつです。

そして、インターネットが登場しました。もうこうなってくると、ITのイロハを理解出来ていないと何が何だかわからなくなります。デザインはデジタルという記号に置き換えられ、手触り感のない、実態のないものになります。

 

昨今、新しいデザイン人種が現れています。プログラムも書けるという意味での理系デザイナー(という呼び方が適しているかは置いておいて)と言われている人たちです。Webデザインはもちろんですが、印刷もデジタル化され、今までに印刷会社や製版職人がこなしていたことを、文系(もしくは芸術系)デザイナーがデジタルスキルで肩代わりしなければならなくなったのです。過去に得た資産をデジタルで置き換えるという作業だけでは、かなり苦しい立場にたたされました。

デザインセンスや口八丁手八丁では済まされず、広範なデジタル知識が必要になりました。広告費や印刷予算の削減で、否応なくWebデザインを手がけることになるのですが、クライアントのコンセンサスを得るには、ITの現状やどのように構築すればベストな方向性かをコンサルティングできなければなりません。

デザインさえ出来ればITリテラシーなんか無くたっていいや、では成り立たなくなりました。極端なことをいうと、プログラムが書けるまでとはいわないまでも、それがどういう言語で成り立っているのかという知識や、デジタルツールやWebの現状、ソーシャルネットワークの概略、サーバのようなバックグラウンド技術くらいはわかっていたほうが良さそうです。デザイナーがそのような専門分野の人たちにアウトソーシングをする場合に、『足元を見られない』という意味で必須です。また、例えば制作面でも自分が知らないばかりにレガシーな規格を使い続け、作業効率が落ちている場合もあります。

今後どうなるのかのアンテナを張り巡らせることも必要でしょう。PDFがまだ一般に普及する前にPDF校正を提案したことがありました。クライアントも最初は面倒なようでしたが、何がメリットでデメリットかを根気よく説明した結果、採用されました。当時はデザイナーでもPDFファイル自体を作れる人が少なかったような気がします。デザインそれ自体とは関係ない部分ですが、振り返るとそれがあるから助かったことも多かったと思います。

Appleが次に何を発表しようが、Googleがどんなサービスを出そうが、デザイナーには直接関係がありません。しかし、それがいつか役に立つ可能性は大いにあります。準備万端抜かりなし、クライアントからいつ突っ込まれても答えらることが信頼を勝ち取ることでもあります。

 

といったような内容を、4月から久しぶりにデザイナーの卵たちに講義しています。最初はデザインをしたいという漠然とした欲求で学校に入ってくるのですが、こういうことをいえばいうほど面倒に思うようになります。丁寧に、かつ興味を持たせるように説得していくしか無いことは、クライアントに対してと同じなのですね。

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